ブルース・スターリング / 嶋田洋一:訳『グローバルヘッド』

ウィリアム・ギブスンと並ぶサイバーパンク界の大御所ブルース・スターリングの短編集。恥ずかしながらスターリング初体験。これはなかなか面白かった。昔読んだ(しかも途中で挫折した)ギブスン『ニューロマンサー』の黒丸尚訳がトラウマになったのか*1サイバーパンクには若干苦手意識があったのだが、『グローバルヘッド』の嶋田洋一訳はこれといった癖もなく、蕎麦をすするかのごとくつるつると読めたのでありがたかった。内容の方も、政治風刺、アジテーション小説、メタSF、ロードノベル、架空書評、クトゥルーものとバラエティ豊かで、思ったほど露骨にサイバーパンクしていなかったところが、個人的には取っつきやすくて良かった。まぁ、これは自分がサイバーパンク無理解者なので作中に流れるサイパン(その略語はどうか)スピリッツをうまく汲み取ることができなかっただけなのかもしれないけど。
収録作品で特に印象に残ったのは「宇宙への飛翔」「ジムとアイリーン」「ボヘミアの岸辺」「モラル弾」「考えられないもの」「ドリ・バンズ」あたり。特に「ジムとアイリーン」のラストは三十路を間近に向かえたやさぐれ男子の渇いたハートに水のように染み渡った。俺も繋がりてぇ。そのためにもコインランドリーで女の子を拾わなくちゃだよ!
スターリングの他の作品も読んでみたくなった。『スキズマトリックス』とか『タクラマカン』とか。あと、いい加減ギブスンに再チャレンジしたい。まずは読み止しの『ニューロマンサー』から片づけるか。

グローバルヘッド

グローバルヘッド

*1:なんか凄く読みづらかった印象が。今読むとそんなことないのかもしれないけど。