ネビル・シュート / 池央耿:訳『パイド・パイパー』

時は1940年夏。現役を退いた老弁護士ジョン・ハワードは戦争で傷ついた心を癒すためフランスのジュラへ釣りに出かけるが、逗留先で英仏軍のダンゲルク撤退の報を聞き、イギリスへの帰国を決意する。知己を得たイギリス人夫婦の子供二人を連れ祖国へ向かうハワードだが、その旅は一筋縄では行かなかった……。
ロードノベル風冒険小説。これは面白かった。英国老紳士超カッケェ。惚れる。突き詰めると爺さんが子供連れて国に帰るだけという恐ろしくシンプルなプロットを、読み応え抜群の物語にしてしまう、シュートさんの 凄い ストーリーテリングにはシャッポを脱がざるを得ない。終盤に登場するゲシュタポの将校を一方的に悪役として描かないところには、お約束に堕さない豊かさがあったし、ラスト近くでヒロインが語る台詞に込められた諸々の感情とメッセージには、ちょっとばかりじんわりもした。幼女が催しちゃうシーンとかもあるけど、きっとその筋の人には堪らないものがあるんだろうね。
割とお勧めなので、皆も読むといいと思うよ!

パイド・パイパー - 自由への越境 (創元推理文庫)

パイド・パイパー - 自由への越境 (創元推理文庫)