ハル・クレメンテ / 井上勇:訳『20億の針』

嵐の夜、南太平洋に二隻の小型宇宙船が墜落した。一方には“ホシ”と呼ばれる犯罪者が、もう一方には“ホシ”を追う探偵“捕り手”が乗っていた。高度な知性を持つアメーバ状の異星人である両者は、他の生物に寄生しなくては生きていけない。流れ着いた島に住む少年バブに寄生した“捕り手”は、彼の理解と協力を得て、“ホシ”の行方を追い始めるが……。
SFミステリの古典。50年代に書かれた作品*1だけあってSFとしては古臭さを否めないけど*2、ミステリ的には思ったよりも手堅い仕上がりで、なかなか楽しめた。容疑者が消去法で一人ずつ絞り込まれていく過程や、さりげなく張られた伏線、真相解明後の一捻りなど、どう考えてもSFファンよりはミステリファンが喜びそうな内容。これを読んだ当時のSFファンはどんな感想を持ったのだろう。ちょっと気になる。それはさておき、続編『一千億の針』も読んでみようかしらん。

20億の針 (創元SF文庫)

20億の針 (創元SF文庫)

*1:日本での刊行は60年代

*2:別にそれが欠点というわけでもないが