暫定復活

お久しぶりです。約1年ぶりの更新です。このまま放置しておくのもアレなので、せめて読んだ本の一言感想ぐらいは書いていこうかと思います。三日坊主で終わらないとイイナ! そんなわけで暫定的ながらも復活。とりあえず、去年読んだ小説で印象に残ったものを記録しておきますね。全て2009年刊行のものです。

『SFが読みたい!2009年版 発表!ベストSF2008[国内篇・海外篇]』

アニメ欄目当て。

SFが読みたい! 2009年版―発表!ベストSF2008国内篇・海外篇 (2009)

SFが読みたい! 2009年版―発表!ベストSF2008国内篇・海外篇 (2009)

田中鈴木『アイツの大本命(2)』

昨年度のBLシーンを席巻した(?)話題のブサイク受け、ブサイク萌えBLの第2弾。今巻はシリーズの雑誌掲載分3編と描き下ろし1編に、読み切り2編を足した計6編を収録。賑々しい学園コメディの中で描かれるハイレベルなBL模様が相変らず素晴らしい。バリエーションの増えたブサイクキャラに新カップル誕生の予感などシリーズの今後が楽しみ過ぎる。ギャグすれすれの奇抜な設定とBL展開の無理のない同居という作者の特色は併録の読み切りにもしっかりと出ており興味深い。

アイツの大本命 2 (ビーボーイコミックス)

アイツの大本命 2 (ビーボーイコミックス)

中村明日美子『片恋の日記少女』

著者初の少女漫画作品集。初作品集なだけに第2作品集の『曲がり角のボクら』と比べると全体的な完成度でやや劣るものの、恋愛や家族にまつわる様々な感情を精細かつセンシティヴに描写しており、充分標準越えの完成度をキープしている。やわらかさと鋭さが同居した独特の絵柄も話の雰囲気とよくマッチしており印象に残る。少女漫画好きなら読んで損なしかと。

片恋の日記少女 (花とゆめCOMICS)

片恋の日記少女 (花とゆめCOMICS)

水上悟志『戦国妖狐(2)』

2巻に渡る長い序章の終わり。面白い面白い。常時クライマックス状態のハイテンションさがたまらない。溜め不足の状態で感情が爆発している部分や、説明不足、描写不足な部分、ダイジェスト気味の駆け足展開など本来ならマイナスにしかならない要素が、その半端ない詰め込み具合をもって作中に独自の熱を持たすことに成功している。作画方面もまだまだ荒削りではあるが勢いとオトコノコ的なカッコ良さがあるし、何よりキャラクター達の表情の描き方が素晴らしい。眼力(メヂカラ)に満ち満ちている。ぶっちゃけ、たまと灼岩がカワイ過ぎるだろ常識的に考えてという話なんデスよ、全ては。何はともあれ続きが楽しみだ。

戦国妖狐 2 (BLADE COMICS)

戦国妖狐 2 (BLADE COMICS)

水口敬文『月色プラットホーム』

話の展開にご都合主義的な部分が目立つ、設定の掘り下げが不充分など気になるところもあったが、それなりに魅力的といえるWヒロイン(片方は露骨に当て馬だが)のおかげで全体の印象はそう悪くなかった。主人公のニブチンさ加減には恐れ入る、というのは読んだ人全員が入れるツッコミか。

月色プラットホーム (一迅社文庫 み 2-1)

月色プラットホーム (一迅社文庫 み 2-1)

笠井潔『青銅の悲劇 瀕死の王』

矢吹シリーズと天啓シリーズが交差するときナディア・モガールと宗像冬樹の新たな物語が動き出す!(某禁書目録風に)
過去の矢吹シリーズと比べると思想的な記述がほとんどないという部分では読みやすい作品に分類されるのだが、毒の混入された日本酒を巡るパズルは偏執狂的ともいえる領域に足を突っ込んでおり、人によっては苦痛を覚えるかもしれない。安易にライトサイドに流れない作者の心意気を買うこともできるが、純粋にエンタメとして本格を楽しみたい読者には不向きといえる。とはいえ、いきなりこの作品から笠井潔に入る読者は皆無とまではいわないが、極めて少数派であろうことは察しがつくわけで、そこはそれ、あくまで作者/矢吹、天啓シリーズのファンやコアな本格ユーザー向けの一冊と考えるのならば、笠井なりの昭和史の俯瞰と自身の人生にまつわる感傷的ともいえる述懐*1、クイーンの某超有名作品を下敷きにした構成、矢吹駆の本名発覚、メタミステリ的、アンチミステリ的な側面など読むべき部分は多い。と思う。
余剰なパーツのせいで必要以上に長大化しているきらいがありまくりだが、渾身の一作であることに変わりはない。「スマートではないが力作」とみるか「力作だがスマートではない」とみるかによって作者への愛情が試される踏み絵的作品、なのか? 自分としては大いにありでした。

青銅の悲劇  瀕死の王

青銅の悲劇 瀕死の王

*1:笠井自身をモチーフにした宗像の口を借りて語られる。